一生和服(褌)党
By 松園 さん

自分の和服との出会いは、決して大袈裟では無く生まれた時からです。産着に始まり、宮参り、七五三、端午の節句、正月、成人式等、その時々節目節目に和服を新調して貰い、それらは現在も実家に大切に保管され、子供にも引き継がれています。実家のある地元では、現在でも村の行事や冠婚葬祭等、和服で列席する事が習わしで自然と和服との付き合いも多くなり、それが当然の様に育ちました。

然し和服に関して一番影響を与えたのは父の存在が大きいと思います。今でも一番尊敬する人物です。昔堅気の人で、仕事以外の服装は全て和服であり、男の下着は白の褌と決めていました。頑固な父に反発もしましたが、いつも和服を着て「でんと」座敷に座る父を尊敬し、どんな時も慌てず家族を守る父を目標にしています。中々超す事が出来ない大きな壁です。

以前父に和服に付いて聞いた事があります。父は「和服は、自分を一番素直に表現できる装い。帯を締めた時、気持ちまで引き締め、家族を守る覚悟を新たに出来る装いだ。」と話してくれ、父の和服姿は子供心にも立派で貫禄が有りました。決して上等な物では無いですが、どこか戦国の武将にも似た貫禄が有りました。その教えは今でも自分の心の中に有ります。若い時は生活にも余裕が無く、和服から離れていましたが、結婚を期に一家の大黒柱を自覚し、父同様家族を守る為、普段着として和服を着用しようと思い、今日に至っています。

仕事が終わり和服に袖を通す時、気持ちの切り替えが容易にでき、生活のめりはりが生まれます。休日には和服で骨董店や古着屋そして寺院巡りを楽しみますが、不思議と和服でお邪魔すると、ご主人や住職の方々の対応が大変親切で思わぬ収穫が多々有ります。そんな得も有る反面、和服を着る事は、その人の人格まで羽織る事に成り、注目も浴びますので気持ちを引き締めないとだらしなく成ります。難しい装いですが父同様、自分を一番素直に表現できる装いです。此れからも色んな場にも和服で出掛け、大切な事柄がある場合には新品の褌を締め、心を「しゃん」として取り組み、此れからも一生、和服と褌を大切にして、次の世代にもこの日本にしか無い素晴らしい装いを伝えたいと思います。

私たちが和服を着るということのある意味での本質が、このお便りには深く語られているように思います。松園さんが本当に感性豊かに和服を愛しておられるご様子が伺えます。ご立派なお父様の存在もさる事ながら、「自分を一番素直に表現できる装い」が和服というのは素晴らしい位置づけですね。生まれた時から自然と和服に慣れ親しみ、それが現在に至るまで活かされておられるとは、憧れるほどに羨ましいです。松園さんのように、自然と日々の暮らしの中で和服を愛し、和服と共に暮らせるような生活の在り方が、もう一度この国に甦って欲しいと切に願います。





Copyright Iori Hayasaka 1998. All Rights Reserved.