山伏修行と越中褌
By 匿名希望 さん

もう20年以前ですが、山伏の体験修行に参加しました。そのときの体験談を報告します。宗教編ではありませんから、着物に関することを中心に報告させていただきます。

学生でバイト先で研修として山伏修行募集がありました。正社員ではないので参加できないのですが欠員ができて誘われました。8月下旬でした。厳しい研修でした。たぶん神社が用意したのでしょう、当日渡されました。購入したものはありません。その中には越中褌1枚・晒1枚・浄衣1枚・白袴1枚・おしめ1本・布1枚・割り箸1本・軍足一足・ゴム底の白足袋1つが入っていました。

品目紹介
越中褌:特に変わっていません。
晒:六尺褌と同じくらいの長さであるが、頭にかぶります。宝冠と呼んでました。
浄衣:厚手の木綿でできていました。半襦袢と長襦袢の中間くらいの長さでした。
白袴:二股に分かれていて、紐で膝のところをしばります。そして伸ばせば長いのですが余った布が足の方に垂れます。腰は簡略系の縛り方です。脇が大きく割れていました。和風ニッカボッカという感じです。膝の紐が輪になっていて縛るのが面倒だが一度きちんと縛ると崩れない。
おしめ:(おしめ)ではありません。ははっは(笑)たぶん(お〆)、赤と白の紙で作られた紐細工ですよ。首にかけます。のしの大きなもの
布:ハンカチくらい、割り箸と食器を包むのです。期間中は食器は洗わないのだ。
割り箸:普通の
軍足:足袋形で2つに分かれている。ワーキングショップに売ってます。
白足袋:祭りで履くもの、地下足袋の白いもの

一同が大広間に集められて、着替えとなりました。これがおもしろいのです。越中褌を逆にするのもいるし、大多数は恥ずかしがっていました。今まで着ていたものは袋に入れると何とこれだけで研修をするんです。ちなみに5日間でした。着替えなし。女はいない。
開会式の後、越中褌だけになって水行にいくんです。それも公道をです。バスは止まってしまうわ、観光客は見ているし、写真は撮られるし、おまけにどこかの放送局までが撮影にきてますから。水行が終わると、濡れた越中褌だけで帰りました。透けて見えるのが恥ずかしかった。そして自然乾燥なんですよ。浄衣と越中褌だけでいるんです。

とそうということもやります。(とそう:難しい漢字)野山を歩き回るということです。昼も夜も行います。そのときには宝冠・浄衣・越中褌・袴・軍足・白足袋・杖でした。でもこれが実に無駄がなく、いわゆる”simple is best”なんです。袴は山歩きしやすいのです。ニッカボッカは山歩きしやすいのと同じです。弓道の袴のように脇が大きく開くんです。ここから涼しい風が入ってきて、中は越中褌でしょう。下半身があつくならないのでいつもより多く歩けるんですよ。宝冠は流れる汗を止めますし、帽子代わりですな。非常の場合命綱や手ぬぐいや六尺褌にもなりますから。

相撲もやります。修羅行として、上半身裸です。下半身は越中褌と袴ですが、脇から逸物までが見えました。たぶん指導者は六尺でした。宝冠を六尺褌として使うていたか不明です。

床固めをやります。いわゆる座禅です。禅寺ではありませんから、おとがめなし。打たれることもない。何とあぐらをかいてやるのです。このとき越中褌は楽ですな。座るのは基本的にあぐらであり、正座ではありません。

就寝は特に指示はありませんでしたが、はじめは袴を穿いて寝ましたが、体が暑くて、遂に越中褌だけで、寝ていました。それほど体力が必要です。私は5日で5キロ痩せました。食事は1日2回、ご飯一膳とみそ汁1杯漬け物2きれです。

月山に登り、最後の日は湯殿山から戻って、閉会式をやり、温泉に入りました。私たちが異様な姿で行っても地元の人は慣れているのでしょう。驚きもしなかった。記念に残ったのが越中褌一枚でして、越中褌一枚で涼んでいました。

体力に自信のある方にお勧めします。JR東日本や出羽三山神社でも体験募集を毎年行っているとのことです。誰でも参加できます。visaで募集したことがありますが、抽選漏れで行けませんでした。

そのほかにも宗教的行事がありますが、ここでは省略させていただきます。

基本形         越中褌・浄衣・お〆・宝冠
山歩き・座禅     越中褌・浄衣・袴・お〆・宝冠・白足袋
水行・滝行      越中褌・宝冠
相撲          越中褌・浄衣・袴・お〆・宝冠
就寝          越中褌・浄衣・袴又は越中褌・浄衣又は越中褌




このお便りもまた、大変貴重な体験談ですね。この山伏修行の体験談からも、褌や袴の機能性の良さが確認できると思います。修行中の衣服は、単に昔ながらの姿がよいというわけではなく、まさにこれらの服装が実に利にかなっていることを物語っているとも言えるでしょう。もしかすると、日本の宗教関係者たちが、もっとも日常的な和装生活を残している人々なのかも知れません。


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