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 ■--扇子の差し方
 >>>市村鉄之助  男  東京  -- 2006/02/23-12:39..No.[2246]
     昨年から,普段着に着物を取り入れております、市村と申します。そこで最近、考えてしまうのは、扇子の差し方についてです。

 当方、結構な熱がりなため、冬でも和装のときには扇子は必需品となっております。そこでまず、冬でも普段着(ウールor紬の長着と羽織姿)で扇子を差しているのは滑稽ではないのか? また、扇子の差し方はどのような形が適切なのか、疑問がつのっております。

 いくつか調べてみますと、差し方は左腰方向に、要の方を帯に挿すということは書いてあるのですが、どの程度、左側に挿すか、またどの程度帯にはさむかなど、詳しい解説は、なかなか見当たりません。

 適当で良いというのであれば、それで良いのかもしれませんが、正しい形や、崩して良い範囲など、先達の皆さんにご教授いただけると幸いです。

 




>>> 優妃讃良  女  埼玉  -- 2006/02/23-16:35..No.[2247]
 
    女性なので、各所同じではないと思いますが、私は通年で扇を携帯しております。
使う扇子は「九寸十一間」という、俗に「男扇」と呼ばれるものを使っています。
差す方向は要を下にして、帯から1,2寸見える位まで押し込みます。
横位置で言うと、腕ではさむ位置、つまり脇の一番真中寄りになります。
長さからして、帯の下から要部分が出てきます。
九寸だと、地面に垂直方向にさすよりも、刀のように若干後ろに向けて斜めに差すと立ち居に差し支えがありません。
この「差し支えない位置に斜めに差す」というのがミソで、この結果、前過ぎでもなく脇過ぎでもない位置に落ち着きます。
帯から上に出ている部分が多いと「みっともない」と言われたことがあります。

女性の茶扇だと短いので、垂直に差せます。

ちなみに、よく夏に見かける、夏扇を帯に差すと、畳んで広くなる面が折り目部分になるので、よれてしまうのですが、皆さん、そんなことないですか?
 

>>> 優妃讃良  女  埼玉  -- 2006/02/23-16:36..No.[2248]
 
    注記:これは私の個人的な指し方であって、世間一般の決め事でもなんでもないことです。
 

>>> えいち  男  東京  -- 2006/02/23-20:49..No.[2249]
 
    市村さん
はじめまして。
自分も扇子は色々な意味で必需品です。
男性の場合は女性と違って帯巾が狭いので、自然と斜めに差す事になりますが、自分も昔は刀と同じように左腰に差していましたが、武士の拵えの時、左腰に大刀、小刀、と差してゆき、扇子は腰に差さずに真ん中から差せと教わりました。ちなみにその場合は白扇でしたが..。この差し方だと以前のように動いても帯の下にすり抜けて落ちたりしないできちっと決まり、やはり差した感じが気持ちいいので、それ以来ずっとそうしています。
丁度おへその辺りから要を下にして左腰に向かって斜めに差す感じでしょうか、あまり意識した事はないのですが、扇子の天(上)の部分の出具合は上から左手の親指と下から人差し指、中指を2本添えて余裕で摘めるくらいでしょうか...後、好みにも寄りますが頻繁に帯から抜き差しをするのであれば親骨がバチ骨等の扇子の方が舞扇の様に親骨を自分に向けて差せるので、地紙が傷みにくいのでお勧めします。あとはその人の体型や扇子の扱い方でも変わってきますので、あまりとらわれずに、見た目のバランスや使い勝手を工夫してみると良いと思います。...^^;では一つのご参考迄に
 

>>> 朝路真行  男  兵庫  -- 2006/02/23-23:17..No.[2251]
 
     初めまして。朝路と申します。

 先にお二人がお答えですので、毎度ながら余談を申し上げます。

 扇子の扱いについては、市村さんがお考えのように、正式な場合=儀式に関する扱い方と、仕舞などで芸能で扱う場合、それ以外の涼を取るための扱いと、大きく分けて三つがあります。

 まず儀式で扱う扇子は、優妃讃良さんがお書きになっている、九寸あるいは九寸五分の鴬骨(うぐいすほね又は蝙蝠骨=かわほりほね)という、骨の幅より広い地紙(扇子に使われている紙の部分)の白扇(地紙が白の物)を使います。御祝儀用に、天地(地紙の上下)に金の線を入れた物もありますが、正式の白扇は白一色です。
 儀式の場合は、携帯のために便宜上、腰に差すことは非礼ではありませんが、本来は手に持つべき物です。もし儀式の最中に手を使わなければならない場合、扇子は懐に入れて始末します。
 刀の大小を差したつもりの位置に、扇子を差すのは、野外などで両手を空けるために、便宜上腰に差すためです。また城中などで、帯刀が許されていない場合、刀の代用として差すこともあります。
 こういう場合はの扇の差し方は、刀同様に差し、一柄分(掌の横幅=一掴みの幅)を帯から見えるように差します。
 つまり、帯に差す場合は、刀の代用とする意があるということですね。女性の場合も帯に差す場合は、懐剣を差す位置になりますね。

 これに倣って、芸能の場合は、帯に差すことを嫌います。差さなければならない場合は、流儀によっての差もありますが、扇が極力見えないように、奥まで差し込みます。
 仕舞扇など、大振りの物の場合は、帯に差さず、袴の紐に差す場合もあります。この場合も腰刀をさす要領で、上から差さずに下から差すこともあります。
 やはり刀のように扱うのですね。ですからこの体の扇は、涼を取るためのものではありませんので、手に持っていても、開いたり、煽いだりすることは失礼とされています。

 それではこれ以外の扇=バチ扇(地紙の折幅と親骨が同じ幅の物)や、夏扇(バチ扇の一種。風が起こりやすいように、折山を多くした物)は、自由に扱っていいのか?という事になりますが、これも先の扇と同様に、腰に差すのは便宜上だけで、手に持つのが礼に合っています。
 優妃讃良さんが御指摘のように、夏扇など幅の広いもを腰に挿すと、扇も傷みますし、身体的にも違和感がありますね。お行儀のことを考えると、やはり懐に入れて持ち運ぶ物のようです。
 扇子を腰に差すようになったのは、明治の廃刀令で、刀を差せなくなった士族達が、刀の代用に差したのが影響しているようです。


 

>>> 朝路真行  男  兵庫  -- 2006/02/23-23:18..No.[2252]
 
    堅苦しい話になりましたが、普段の扱いには、さほど気にされることないと存じます。
 夏場に使う渋扇なども、大きい物になりますと、一尺ありますから、とても懐には入りませんし、煽がない時は、手に持っているのも大変ですしね。かと言って、腰に差すのも大きすぎます。
 こういう場合、私は背中に差すことにしています。右手で扱いますから、手を後ろに回して、背中心あたりを目安に斜めに差し込むのです。こうすると立ち座りの邪魔になりませんし、腰と違って、動いて擦れることが少ないですから、傷み難いですね。背もたれのある椅子に座っても、帯の結び目がある分、扇への負担も少なくなります。ですが気にされる場合は、やはり手に持たれた方がよいでしょう。

 儀式用の扇と、夏扇などのバチ扇が、同じ扇なのに、なぜ扱いが違うのかと申しますと、前者が日本で発明された物に対して、後者が中国などから逆輸入された物だからという説があります。つまり輸入品だから、お洒落のアイテムという扱いなのですね。

 以上取り止めも無く申し上げました。

 

>>> けんちゃん  男  神奈川  -- 2006/02/24-14:50..No.[2255]
 
    話から外れますが、
「扇子を帯に差さないで」という次の記事があります。
こちら
ご参考までに。
なお、私には特別見識はありません。
 

>>> 市村鉄之助  男  東京  -- 2006/02/24-23:17..No.[2259]
 
     優妃さま、えいちさま、朝路さま、けんちゃんさま、ご丁寧で含蓄のある解説、ありがとうございます。たいへん、参考になりました。いままでの疑問が氷解し、すっきりしたように思います。

 「背中に差す」というのは、目からウロコです。左腰に差すのが打刀の名残なら、背中に差すのはさながら妻手差や鎧通しのイメージですね。私、多少、武芸をたしなみますので、そういう意味でもなるほどと思った次第です。

 みなさん、ありがとうございました。
 

>>> 京屋  男  東京  -- 2006/02/26-21:41..No.[2264]
 
    朝路さんに言葉に少々付け加えさせて頂きます。
芸能と一言で片付けられていますが、歌舞伎・日本舞踊の世界では扇を帯にさすがの当り前で嫌ってはいませんので。お仕舞では確かに袴の紐にさしていらっしゃいますが、そういうことはこちらではしません。扇は武士の刀にあたると言われ普段煽いだりすることは禁じられているのは同じです。あくまでもこれはご質問のような普段使いの扇のことではありませんので念のため。
 

>>> 市村鉄之助  男  東京  -- 2006/02/28-02:43..No.[2266]
 
     朝路さま、京屋さま、さらなる補足、ありがとうございます。扇子ひとつとはいえ、奥の深いものだと改めて認識できました。
 また、何かのおりには、ご指導お願いいたします。