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 ■--ウールの着物と丹前の違いは?
 >>>Hiro  男  東京  -- 2005/09/26-01:53..No.[1788]
    こんばんは。

先日、中古着物屋でウールのアンサンブルを購入致しました。
今まで夏の浴衣くらいしか着ていなかったのですが、
ずっと冬にも着られる様な和服が欲しいと思っていましたし、
羽織ってみてサイズもピッタリだったので即購入した次第です。

羽織の着方等を調べようとこちらのサイトを覗いていたところ、
「丹前」というものの存在を知りました。
厚手のウール地で、浴衣の上から着る防寒の部屋着のようなものだとか。
この丹前というのは、普通のウールの着物とどこが違うのでしょう?
生地の厚さと言っても、どのくらいが厚手なのか、浴衣しか知らないので
いまいちピンと来ません。写真を見ても良く判りませんでした。
普通の着物と丹前、見た目で決定的に違う部分があるとしたら、
どういう所なのでしょうか?




>>> 朝路真行  男  兵庫  -- 2005/09/28-00:06..No.[1796]
 
    初めまして、朝路と申します。

 何方もお書きになりませんので申し上げます。

 まずHiroさんがお求めになったお着物がどのような物か判りません
ので、一般的に「丹前」と現在呼ばれている、温泉宿などで供される
ウールの着物との違いを申し上げることはできません。
 ウールに種類があるのはご存知ですよね?スーツに用いるような生地
もあれば、オーバーコートに用いるような厚手の物もあります。
 ウールの着物にも大まかに二種類あり、部屋着としてだけ用いるもの
と外出にも使えるものがあります。
 現在「丹前」と呼ばれるものは、前者の部屋着に近い物とお考えに
なればよろしいでしょう。

元々「丹前」とは関西での呼び方で、関東では「どてら」と呼ばれて
いました。丹前とどてらはまったく異質な物と言う説もありますが、ど
ちらにしても室内着であることは変わりません。真綿または木綿綿を入
れて作る防寒着です。
 「丹前」とは、江戸初期に堀丹後守の屋敷前にあった遊女風呂の事を
指す言葉で、丹後守屋敷前と言うことで通称「丹前風呂」と呼ばれたの
が語源です。
戦が無くなって平和になったために、財力はあっても無職になった
旗本や御家人、元武士と言った人たちが、異形なファッションを競う
場所になり、そこに通う客を「丹前奴」 その人たちのファッションを
「丹前風」と言うようになりました。後にこの風呂屋は廃業しましたが、
当時に流行った広袖(袖口を作らない形)の着物が、風呂帰りに着る防寒
着に似ていたことから、丹前と呼ぶようになりました。 
 当時、綿入れは大変貴重で高価な物でしたから、そのまま夜具として
使ったりもしました。ですから着物の丈よりも長いものもあったりした
わけです。
 戦前までは、その頃の原型をとどめた「丹前」や「どてら」が、一般
家庭でもよく見かけられましたが、暖房設備の変化によって、家庭から
は姿を消しましたね。
 丹前が温泉で出される訳は、これでお分かりと存じます。湯冷めを防
ぐためですね。
 ウールの生地が大量生産されるようになり、綿入れよりも安価で、扱
いも簡便なことから、ウール製の丹前が広まるようになりました。

 湯冷めを防ぐことが第一の目的ですから、裏面を起毛させ風が入ら
ないように袖口なども、通常の着物より狭く仕立ててあります。
 通常の着物は、体型に合わせ袖丈や袂を取りますが、現在、丹前の
下に着るものは筒袖の寝巻き浴衣ぐらいですので、袖丈も袂も短い
仕立てになっています。大きな違いはこのあたりではないでしょうか。

 御質問の意に添わない場合は、どうぞご容赦を。

 

>>> Hiro  男  東京  -- 2005/09/28-01:33..No.[1797]
 
    >朝路真行さん
早速のレスありがとうございます。
丹前というのは生地が厚く、袖丈や袂が短めで袖口も狭いもの、という事ですね。

更に質問で申し訳ないのですが、丹前の上に羽織を着てしまえば、
丹前だかどうだか見分けはつかないという事でよろしいのでしょうか?
それともぱっと見で判る位生地が厚いものなのでしょうか?
普段スーツやコートを着る生活をしていないので、生地にも疎いものですから
判らない事ばかりで申し訳ございませんが、ご教授よろしくお願い致します。
 

>>> 優妃讃良  女  埼玉  -- 2005/09/28-10:17..No.[1798]
 
    丹前は、もともとの出自の通り、湯上りに着るものですから、浴衣を着て、その上に着ます。ですから、襟から浴衣の襟が覗きます。
また、襟の汚れ対策に、黒などの別布の掛け襟をしてあることがあります。
江戸時代の女性の着物に黒のかけ襟をする習慣がありましたが、維新後にすたれました。が、どてらや丹前のかけ襟は続いたようです。

一方、普通のウールの着物であれば、下に着るのは、襦袢です。ですから、襟から見えるのは、襦袢の襟になります。
下馬といって、襦袢の代わりに浴衣を用いる着方もありますが、その場合は、襟をかけるなどして、「いかにも」な風を隠します。
つまり、襟から襦袢の代わりに浴衣の襟が見えると「丹前の代わりに着てるのか?」という風に見えます。
風呂屋の帰りでもないのに、着物の下から浴衣の襟が覗くのは良くないと。
おうちによっては、室内着としても、昼間っからそんな格好をしているのは、病人かものぐさ者と見たようです。

丹前は、モノによってずいぶん差異があると思います。
大伯母のところからきた、大伯父のどてらは紬地にふっくらと綿を入れたもので、広袖で襟には黒ビロードのかけ襟がしてあります。
これはもうバレバレのどてらです。洋服で言うならダウンジャケット。
また、逆にウールや木綿の着物と遜色のない丹前もあると思います。

で「羽織を着てれば、区別つかない」という着方をする場合は、羽織を脱ぐことができませんので、ご注意を、
丹前は、コートに対応するものですので、これに羽織を羽織ったとすると、かなり防寒効果が高いです。つまり、東京の冬程度では、屋内では暑くていられないと思います。戸外はともかく移動手段の鉄道や車、バスも暖房していますしね。普段、コートをお召しにならないで過ごされているとなると、冬でもかなり暑くて辛いのではないでしょうか?
 

>>> 朝路真行  男  兵庫  -- 2005/09/28-17:20..No.[1800]
 
      どうも朝路でございます。

 羽織を着てしまうと丹前かどうか判らなくなってしまうかどうかと言うことですが、残念ながら物によりけりとしかお答えできません。
 昨今は生地の特殊加工技術も進歩しておりますから、昔のような厚手の生地でなくとも、また起毛加工なども薄くなってきていますから、羽織を着てしまえば判らなくなるものもあるかと存じます。言い換えれば、現在は防寒用のウール着物を丹前と呼んでいるだけの物もあるということです。

 優妃讃良 さんがお書きのように、一昔前の丹前は綿入れの事を指し、ウールではなく絹物、あるいは木綿で作ったものです。襟を掛けることからもお判りのように、普通の着物と同様オーダーメイドするものでした。前回にも書きましたが、夜具にも使うような長い丈の物もあれば、風呂帰りに着込むような物もあります。丹前とはこのような場合にのみ使うものであって、普通の着物とは一線を隔しています。

 これが原則ですから、オーダーで作らない限り、市販されている丹前と呼ばれるウール着物が、通常のウール着物以上に仕立てられて販売されているとは考えられません。
 優妃讃良さんがお書きのように、羽織を脱ぐことはできませんし、全体的にむっくりと丸みを帯びて見えるかもしれません。

 Hiroさんはスゥエットの上下でどこにでも出掛けていかれますか?いくら高価なスゥエットでも、行かれる場所は限られていませんか? またポロシャツにネクタイを締めてスーツを着られますか? いくらYシャツと遜色ないポロシャツでもネクタイは締めませんよね? Yシャツとポロシャツは仕立てが違いますよね。
 丹前に関しても同様にお考えになれば、生地の厚みだけで判断するのではないとご理解いただけると存じますが、いかがでしょうか?

 

>>> ひょうたん小僧  男  東京  -- 2005/09/28-20:28..No.[1802]
 
     私は昨年「丹前」を長着風に仕立てました。縮み織の本結城紬を表に飛切の真綿を入れて、お洒落にと蜘蛛の巣模様の絹裏を使いました。とても暖かく身体に吸い付くがごとく軽くて、着ていて暑いくらいのものですが、どんなに金を懸けて作っても丹前は丹前。よそ行きはおろか外出も儘なりません。中綿のあるものは無論、無いものでも、たとえ羽織を着たとしても見る人が見れば、可笑しいことに気づかれてしまうと思います。ましてや丹前は風呂上りの就寝2,3時間前に羽織るものと存じております。
 

>>> Hiro  男  東京  -- 2005/09/29-01:30..No.[1803]
 
    皆さん詳しく説明して頂きありがとうございます。

誤解がある様なので一言添えさせて頂きますが、
私は丹前を着て外出しようとか、
丹前の上に羽織を着ようは思っておりません。
袖以外に仕立ての違いがあまり無いのかどうかを知りたくて
「袖を隠してしまえば」という意味で
>丹前の上に羽織を着てしまえば、〜〜
と質問させて頂いたのですが、誤解を招いてしまった様で申し訳ございませんでした。

とりあえず、もう一度整理させて頂くと、私の知りたい事は
>普通の着物と丹前、見た目で決定的に違う部分があるとしたら、
>どういう所なのでしょうか?
この一点に尽きます。
・袖丈や袂が短めで袖口も狭いもの
・厚手のウールや綿入りの物
・下に浴衣が見られるもの(下馬とは別)
これらはぱっと見でも丹前だと判るものという事ですよね。
他にはウールや木綿の着物と遜色のない丹前もある、と。

どうしても以下の一点だけ疑問が残るのですが、
>Yシャツとポロシャツは仕立てが違いますよね。
>丹前に関しても同様にお考えになれば、生地の厚みだけで判断するのではないと
>ご理解いただけると存じますが、いかがでしょうか?
ポロシャツは上にジャケットを着てもYシャツとの仕立ての違いが判る様に、
丹前も羽織を着ても長着との仕立ての違いが判るという事でしょうか?
その違いはどういう物なのでしょうか?

丁寧に説明して頂いているにも関わらず理解が出来ずに申し訳ございませんが
懲りずにご教授頂ける様でしたら、よろしくお願いします。
 

>>> 朝路真行  男  兵庫  -- 2005/09/29-07:11..No.[1805]
 
     どうも、朝路でございます。

 まずポロシャツとYシャツの違いはお判りですよね? 普通ポロシャツは鹿の子地の
伸縮性の高い生地を用います。元がスポーツ用に作られたものですから、動きやすい素
材を用いますね。
 それと同様に丹前も、防寒用の生地を用いるということです。最初にも申しましたが、
ウール製の物の場合は大抵が裏起毛の生地を用います。ですから生地は分厚くなる。
それは御理解頂けているようですね。
ポロシャツとYシャツを引き合いに出しましたのは、用途がまったく違いながら、一括りにしますとシャツの部類になるのと同様に、丹前も着物の一種であるから一目で違いがなければ同じ・・・とはならないと申し上げたかったのです。
Hiroさんは、顕著に判るポイントはどこなのだろう? とお思いのようですが、それは
以前にも申しましたように、必ずここが違うとは全てにおいて言うことはできません。
 袖口や袖丈に現れているものもあれば、襟で分かる物もあります。他の皆さんがお書きのように、オーダーメイドもあれば、量販店や温泉宿などで大量に流通しているものもあります。スーツはシングルでないとスーツではありませんか?ダブルのスーツもありますね。二つボタンの物もあれば三つボタンの物もありますよね?

 私が、あるいは和装をよく知る人が呉服店なり古着屋に行って、
「これは丹前だ。これはウールの着物だ」と見分けるとしたら、そのポイントになる所は
どこか?というのがHiroさんの御質問の意図だと致しますと、やはり見分けるポイントは
使われている生地と仕立てです。
 それではどこが仕立ての違いなのか? ・・・これでは堂々巡りになってしまいますが、解決策としては、何かの機会に現物の丹前を御覧になることです。写真では判らないからと投稿されたのと同じに、文字だけで「ここが違います!」と言い切れるものではありません。
 ポロシャツの生地とYシャツの生地は見た目も触覚も違いますね。物によりけりですが、丹前にするようなウール生地と着物にする生地は一目で違うものが殆どです。その違いは、生地の光沢であったり、厚みであったり、風合いであったりします。
ひょうたん小僧さんが誂えられたような、普通の着物にも用いる生地を使ったとしても、その場合は仕立て方が違ってきます。それは普通の着物と用途が違うからです。その違いは、袖丈や袖口の作りや襟などに現れてきますし、綿が厚く入っているなどですね。
(着物の種類によっては薄く綿を入れて仕立てる物もありますが、丹前と比較にならない量しか入れません)

 Hiroさんの御質問の意図を邪推いたしますと、これから着物を購入される際に、「物が判らないから誤って丹前を買ってしまわないように」とお考えなのでしょうか?
生地の種類には疎いとお思いならば尚更のこと、呉服店なり百貨店に行かれて、着物用の生地をよく御覧になってみてください。そうすれば「あっ!」と全てが氷解すると存じますよ。

 

>>> 優妃讃良  女  埼玉  -- 2005/09/29-10:09..No.[1807]
 
    「Yシャツとポロシャツでは、ツクリも違うから」と思う場合は、
「綿ネルシャツとYシャツ」という比較にしてみると良いと思います。
綿ネル地のシャツは、Yシャツと同型で襟付き前ボタンです。
しかも「木綿100%」とという意味では同じです。
厚手の生地を使って、襟裏にすべりよくする裏地を張ったりして、シャツに重ねて着るタイプの綿ネルのもあります。
カジュアルシャツとビジネス用Yシャツをご存知の方なら、これらが同じ「木綿100%の白無地」であっても、用途はそれぞれ全然違うということをご存知でしょう。丹前の生地の瑣末で決定的な差は、これと同じようなものです。

朝路さんのおっしゃるように、実際の「丹前」というものを見てみて下さい。その差がわかると思います。
 

>>> ひょうたん小僧  男  東京  -- 2005/09/29-22:33..No.[1808]
 
     お二方のおっしゃる通りだと思います。私の作った「丹前」は普通の着物生地であり、仕立ても着物の長着とまったく同じにしました。
 違っているところと言えば、まず全体に中綿が入っているところと袖口布が付いていないこと位で寸法も仕立て方も長着と同じです。でもこれ、正真正銘といったらおこがましいんですが間違いなく丹前です。
 この事は大島紬を使おうが、縞お召を使おうが、紋付羽二重の表で作っても変わらないと思います。
 どうぞ実際の着物や丹前に触れて、このことを実感してください。
 

>>> Hiro  男  東京  -- 2005/09/30-00:55..No.[1809]
 
    度々レス頂きありがとうございます。

やはり仕立てに明確な違いがあるというワケでは無いのですね。
単の着物と浴衣くらいの差、という事なのですかね。
#尤もこの両者の差もよく判ってはいませんが。
主な違いは用途であって、物によっては明確な差が出るという事ですね。

長々とお付き合い頂き、本当に申し訳ございません。
お陰さまで大変良い勉強になりました。
ありがとうございました。