着物の買い方

はじめての着物選び

 着物を新調する場合は、今でも生地を選んで誂えるフルオーダーが基本です。ここでは初めて着物を誂える場合のポイントを簡単にご紹介します。
 現在は仕立て上がった完成品のプレタ着物も販売されてはいますが、着物という衣服は洋服以上にサイズの重要性が大きく、微妙なサイズの問題は、
 着姿だけでなく着心地や着易さにも大きく影響します。着物を着こなしたいと願っているならば、やはり初めから誂えの着物が理想ではありますが、
 古着やリサイクル着物を買う場合も自分に合ったサイズかどうかの確認は必須と考えましょう。
 ※着物のサイズについての詳細は「着物の仕立て>採寸方法」を参照してください。

 はじめての着物選びは、何を一番に優先したいかを条件に、予算に合わせて一番気に入ったものを選ぶ、というのが最も現実的です。
 優先したい条件の候補としては、色柄、素材、値段、着心地、機能性などがあげられるでしょう。
 それを踏まえたうえで、素材よりも色柄を優先するのか、色柄よりも素材なのか、あるいはやはり価格なのかを判断し、選択していきます。

 生地選びのポイントは、単か袷でも変わってきますし、一律に説明するのは困難ですが、強いて言うならば、適度なハリがあり、
 しなやかに思える生地ならまずまずで、薄すぎてペラペラ感を感じたなら、敬遠したほうが無難です。
 いずれにしても、生地の手触り、重さ、生地の特性などを吟味し、総合的に判断して好みに合ったものを選びます。
 着心地は、経験と比較ができなければなかなか実感できない要素ですが、本来はこれが最も満足度を高めてくれる要素です。
 最初のうちは、お店の説明や評判、実際の生地の感触などから判断してみましょう。

 機能性は、洗える素材かどうかという点や、裾さばきが良く歩きやすいかなど、どのように着こなしたいかによって変わってくる要素です。
 手入れに関しては、汚れ防止の撥水加工を頼めば、正絹素材もそれほど恐れることはありません。

着物の揃え方

 着物を揃える楽しみも、着物を着る大きな魅力のひとつです。毎日袖を通したくなるような着物を、上手に揃えていきましょう。
 ここでは、着物を揃える上での全体的なポイントを中心に説明します。最終的に純和装の一揃えに必要なアイテムは次の通りです。

 (1)和装肌着  肌襦袢の利用をお勧めします
 (2)襦袢    長襦袢か半襦袢、半衿の色を選びます
 (3)長着    正絹、木綿、ウール、麻、化繊などから
 (4)帯     角帯が基本で、兵児帯は寛ぎ用です
 (5)羽織    誂える場合は、羽織紐も必要です
 (6)袴     着用目的、好み、用途に応じて揃えます
 (7)足袋    白、黒、紺が基本ですが、色足袋も
 (8)履物    草履、雪駄、下駄から選びます
 (9)その他   羽織紐、手拭い、扇子、鞄類、コートなど

 和装肌着は初めから揃えておくことをお勧めします。せっかく着物を着るなら、最低でも肌襦袢を下に着ましょう。洋服の下着類は衿が滑って着崩れの原因となります。
 必要な小物類として腰紐を、襦袢と長着の計2本、用意すればほぼ全て揃います。好みや慣れ具合に応じて、裾除けや褌なども試してみて下さい。
 二、の襦袢は、普段着なら半襦袢が洗濯などの手入れは楽です。長襦袢の場合、着物や全体の印象に合った色柄を選びましょう。
 襦袢は半衿の色次第で、衿元の印象が大きく変わります。将来的に、可能であればですが、揃えておきたい半衿の色の数だけ長襦袢を用意すると、半衿の付け替えで悩まなくてもよくなります。
 三~六、の長着、帯、羽織、袴は、着用目的に応じて揃えていくようにすればよいでしょう。最低限、長着と帯があれば着流し姿が可能です。
 羽織には羽織紐も必要です。礼装以外での袴は、必須ではありませんが、男性の和服姿ならではのものであり、積極的に活用したいアイテムでもあります。
 帯は角帯がオールマイティに使えます。気軽な兵児帯を好む人もありますが、基本的には軽装帯と考えて下さい。角帯は幅と長さを確かめて体系に合うかどうかを確認し、適度な厚さと固さのものを、好みに合わせて選びます。
 七、の足袋は、着物姿を引き締める重要なポイントです。白足袋や紺足袋が基本で、これらはどんな姿にも利用できますが、色足袋も含めて、着姿全体の色のバランスを確認した上で選びます。
 八、の履物は、手頃な右近下駄などから履き慣れると着物での外出も苦になりません。一般には畳表の雪駄よりも草履の方が歩きやすいと思います。いずれも鼻緒の調整を行ってから履くと安心です。
 九、であげた和装小物などは、必要に応じて揃えていきましょう。手拭は気軽に買えるので、目に付いたものを揃えておくと重宝します。
 通年着物で過ごすには、秋冬用の着物と夏用の着物がそれぞれ必要ですが、下に着る襦袢や下着もそれぞれの季節に合わせたものが必要となります。
 一度に揃えるのは荷が重いという場合には、、シーズンごとに目標を持ち、着慣れるにつれ、和装品を少しずつ増やしていくのが現実的です。
 たとえば、着物と羽織がそれぞれ二枚ずつあれば、都合4通りの組み合わせが利用できますので、まずはそれを目標に揃えていくとよいでしょう。

お茶席のきもの

 茶道の世界には、ある意味で独特な着物の着用ルールがあります。初釜など大きな茶会と、身近な人の集まるの小さな茶会など、茶会の種類や格式により、服装への気遣いも自ずと変わります。
 一般的には、正式な茶会などでは、色紋付など紋を入れた色無地の着物と、仙台平の縞袴としますが、カジュアルな茶席などでは、御召や紬の着物であってもよいでしょう。
 羽織の類は、家元をはじめ、亭主となる立場の人などが十徳を着用する以外は通常着ないものですが、
 道中に着て行った場合は、茶席に入る前に、寄り付きと呼ばれる待合室で羽織を脱ぎ、風呂敷に包んでおくなど、流儀に従って対処します。
 いずれの場合も、茶会の格式による装いの違いや、所属する流派によっても指導の違いなどがありますので、参加者同士などの間で確認するのが一番です。
 お茶席の場合、概ね共通して言えることは、その場の空気を乱さない服装であることを、心がけるべきといえるでしょう。
 たとえば、好みや手持ちの着物の都合を優先して、一人だけ浮き立つような目立った服装となる場合、やはりその場の空気を乱してしまいます。
 大きな絹擦れの音がする生地の着物も控えた方がよいでしょう。
 以上のような観点から、一般的には、控えめな無地系の着物や袴が好まれ、無地御召、縮緬、無地袴や控えめな縞袴などが茶席向きとされています。