雪駄

和装用の履物について

 雪駄は、竹皮で編んだ畳表の裏底に、牛革を縫いつけたもので、かかとの部分に尻金(裏金)とよばれるプロテクターや金属製の鋲が打ち込まれているのが特徴です。これらは歩いた時に、チャラチャラと響く音を出すためのもので、どちらかというと趣味趣向的な目的で江戸時代に始まったものです。
 つま先が反り返り、前坪が手前に下がったものほど粋とする傾向もありますが、それらは趣味の世界でのことと捉えて差し支えありません。
 実際には、履いているうちにどうしても反りがなくなり平たくなりますし、ほんとうにつま先をひっかけるように履くのは歩きにくいものです。
 なお、雪駄とは、表に直接裏を張り合わせた構造のものをいい、高級品では接着剤を使わず、手縫いで縫い合わせてあります。底の周囲に細く切れ込みがあるのは、この縫い目を覆うための仕様で、見た目には糸目は見えないように作られています。接着剤で張り合わせたものは、履いている間に剥がれてきますので、長く愛用するなら手縫いの物を選びましょう。
 また、竹皮で編んだ表を一般に畳表といい、草履表にも使います。昔は棕櫚の葉を編んだものもありましたが、現在はほとんどが竹皮製です。畳表という名は、畳のよう見える外見からの名で、い草で編んだ畳を使うからではありません。
 昔から「南部表」という種類が最高級品と称され、南部藩の武士の副業から始まったことからこの名がありますが、現在は岩手県以外でも南部表の製品は作られています。
 畳表は、編み目の詰まったもの、角の処理のなめらかなものほど高級品とされます。「カラス」と呼ばれる、渋い茶色に染めたものは、おしゃれ用です。雪駄は、畳表以外にも、草履と同じく様々な素材で作られており、普段用にはビニール表のものなどもあります。
 裏底の素材は赤茶色の牛革が使用されますが、草履底に使われるクローム底の牛革に比べ濡れた路面では滑りやすいので注意が必要です。
 ちなみに、雪駄は千利休が考案したとされていますが、これは俗説であり、竹皮表・牛革底の雪駄は、千利休の時代にはまだ履かれていなかったようです。
 いずれにせよ、本来雪駄は待合から茶室に入るまでの路地を歩くためのだけの履物で、古くは「雪踏」とも書き、雪の上を歩くための草履として考案されたもので、雪の字が名前についているのはそのためです。
 雪駄は本来、草履の一種に分類されるもので、素材の違いで草履と区別されるわけではありません。現在の雪駄は、主におしゃれ履きとして広く利用されている種類の履物です。

畳表の雪駄

千利休が考案したとされる雪駄は、畳表の草履の裏底に牛革を貼ったもので、かかとにつけた皮の部分に写真のような金属製の鋲が打ち込まれているものです。草履は通常、表の台と底張りとの間に一枚芯が入れてあるもので、裏底の素材もクローム底(女性用の草履で使う牛革底)です。ですから、一般的には草履の方がかかとも高めです。(私は雪駄派で、今は草履を持っていないので比較写真はありません)

雪駄や草履のサイズはおよそフリーサイズで少し小さめなくらいが丁度いいです。鼻緒にちょっと指の先をひっかける程度で、後ろはかかとがはみ出すようにして履くのが粋な履き方です。私のは普通のより大きな八寸五分(25.7cm)のもので、専門店に行かないとなかなか置いてありませんが、日常履きには一般的なサイズのものも履いています。雪駄のかかと裏

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: setta7.jpg

雪駄の表(右の雪駄の方が高級品)

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: setta6.jpg
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: setta8.jpg

雪駄の表は棕櫚(シュロ)の葉か竹の皮で編んだ畳表のもので、上の写真でも違いがわかるように、目のつんだものが高級品とされます。普段用にはビニール表のものなどがあります。草履は比較的趣味性の高い素材が多く、よく見かけるのはエナメルのやつですが、爬虫類や象、カンガルーなどの皮草履もあります。こうしたものは通人や年配好みとされますが、個人的にはあんまり好きではありません。なお、皮草履は普通鼻緒も同じ素材です。

礼装用の履物は、畳表に白の鼻緒、その他は鉄紺や黒、茶、鼠などの鼻緒をつけます。雪駄は好みで鼻緒を色々とすげ替える楽しみもありますが、鼻緒を取り替えてくれる履物屋さんも今では数が少なくなり、どこにでもあるとは言えなくなってしまいました。印伝の鼻緒も人気がありますが、やはり長時間履いていて痛くならないのはビロードなどの布性の鼻緒です。こうした鼻緒は3000円くらいから買えますし、すげ替えの時間も雪駄は30分くらい、下駄なら10分くらいで大抵やってくれます。

雪駄の値段は15000円~45000円くらいですが、東京・大阪の履物問屋を利用できるならもっと安くいいのが手に入ります。エナメルの草履は大体20000円前後からありますが、趣味性の高い動物皮のものは品により値段もピンキリです。なお、馴れないうちはどちらかというと、雪駄より芯が入っていてかかとの高い草履の方が履きやすいと思います。

雪駄

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: setta2.jpg
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: setta3.jpg

畳表は目がつんでいるものが
高級品とされる。こんな風に反りのあるものが
歩きやすくて粋に見える。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: setta4.jpg

これは二枚重ねのもの。
(一番上は数えない)。
一般には一枚~七枚重ね
のものがあります。
礼装用の白鼻緒の雪駄普段履きのビニール表の雪駄

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: setta1.jpg
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: setta5.jpg

いろいろな雪駄

北海道札幌市、「和装履物専門店現代屋」の高野さんにご提供いただいた、男性用和装履物の画像です。もちろん、ここに紹介する画像の履物は、高野さんのお店で販売されているものです。詳しくは「和装履物専門店現代屋」さんのホームページをご覧の上、お問い合わせ下さい。

「トカゲ皮」の雪駄 雪駄の裏底(牛革に金属鋲)
「エナメル」の雪駄 「シコロ織り」の雪駄
「印伝」の雪駄 「蓑虫(みのむし)」の雪駄
画像提供:、和装履物専門店現代屋の高野様(北海道札幌市)。

ここで紹介した種類と同素材の草履もありますが、現代屋さんでは特注となるそうです。いずれもこの辺は、いかにも通ごのみと言えそうで、人によって完全に好みが別れるところです。個人的には「印伝」のは一足欲しいけど、爬虫類のは遠慮したいです。ここに紹介したものの他にも、コルク素材表のものや、スェード調のエクセーヌ表のなんかがあります。エクセーヌのものは滑りにく、脱げにくいので重宝しますが、しばらく履くと足の跡がくっきり付くのが難点です。