外出着

外出着とは?

外出着ならお召や紬類のきものが向いていると一般には説明されていますが、そもそもきちんとした外出着の定義なんてありません。強いて言えば、普段着よりもちょっといい着物ってとこでしょうか?この、「ちょっといい」とは決して高価だとか、これこれこういう種類のきものだとかいうわけではなく、個人個人の判断で、「お気に入り」だとか「おしゃれ」だとか思っていれば、それが外出着=よそゆきの着物という訳です。
言い換えれば、まったく洋服を選ぶ時のそれと同じだと思ってもよく、和服だからといって、必要以上に難しく考える必要はありません。ただし基準はともかく、和装の場合、袴を着けただけでかなり改まった印象を与えることも事実です。洋装よりも目立ちたいという人にも、和服は絶好の衣のアイテムとなるでしょう。このページの説明を参考に、ぜひあなたなりの和装をマスターして下さい。

改まった席には、羽織袴姿で

写真は、お召しの上下に訪問袴をつけたもので、羽織に背紋一つあれば準礼装にもなります。袴を着けるのは改まった外出の時くらいで、平素は 角帯を締めて羽織を着れば、外出着として十分な着姿だと思います。 外出着の素材は一般にお召や紬など正絹素材が一般的ですが、ちょっとした外出程度ならウールや木綿などでも十分で、素材の種類を気にせずともよいでしょう。ただし、だらしなく見えないよう、着こなしと立ち居振る舞いには気を配りましょう。
帯は角帯がお勧めです。兵児帯を好む人もいらっしゃいますが、個人的にはやはりきちんと角帯を締めた方が引き締まって見えると思います。帯の種類や色柄は着物に好みで合わせればよいでしょう。
袴を着けた方が格が上がりますが、普通は羽織だけでも十分です。広くは袴を着けない着方を「着流し」と言いますが、正確には羽織も袴も着けていない場合(長着と帯だけ)を言います。袴の紐の結び方は、本来は礼装時も含めて一文字にします。長らく常識となっている礼装時の十文字結びは、明治以降に発案されたもので、結び目が崩れやすく本来実用的な結び方ではありません。
長襦袢は季節や好みに合わせて羽二重やモスリン、化繊などを選べばいいと思いますが、袖口が着物からはみ出ないよう注意しましょう。丈は少々短くても裾からはみ出すよりはマシです。半衿は基本的には着物と同系色が無難ですが、足袋や羽織紐と合わせるのも素敵です。
足袋は黒や紺が一般的ですが、着物や袴と合わせて色足袋や柄足袋を履いてもよいでしょう。ただし、足元は意外と目立つので着姿のイメージのバランスを考えて選びましょう。また、特別な場合を除き、着流しで白足袋は普通履かないものとされていますが、暑い時期や足元をスッキリ見せたいときにはかえって効果的なアイテムです。好みで履き分けるとよいでしょう。また、個人的には着物関連業者に限らず、ビジネスで和装を取り入れる際には、清楚な印象の白足袋が好印象だと思います。ただ、白足袋は思った以上に目立つので、履くなら汚れや綻(ほころ)びのないものを。

自由な組み合わせで楽しめる、
長着+羽織

  

改まった席に出る時以外の外出着や普段着は、季節にも応じて、ある程度自由な感覚で取り合わせや着こなしを楽しめばよい思います。私自身はごくオーソドックスな着方しかできませんが、最近は野袴にブーツを合わせたり、襦袢の代わりに低いスタンドカラーのシャツを着たり、自由なセンスで着る提案がよく話題にされているようです。右の写真のように、袖なし羽織の場合はわざと羽織紐を付けないスタイルも。
着る人の好みに合わせ、着ていて気持ち良いものを上手に良く着こなせば、和装の世界でうるさくいわれる取り合わせにも、必要以上に拘る必要はないと考えます。ただし、奇抜な着こなしも、結局は和服を着なれた人の方がサマになるものなので、情報としてだけでも、和服の基本は知っておいたほうが安心して楽しめると思います。なお、外出時は手拭いなどの小物と一緒に、替えの足袋も持参しておくと、助かることが多いものです。

夏の外出着

  
能登上布の着物と紗の夏羽織  小千谷縮みの着物

夏の着物は正絹素材の絽や麻素材の着物が中心となりますが、浴衣を筆頭に、薄手の木綿生地の着物も活用できます。麻の着物は高級品が多いのですが、比較的値段も手頃な小千谷縮みは、一枚あると重宝する着物です。非常に軽くて涼しいので、夏の普段着には最高です。麻の着物は木綿同様に家庭で洗濯できます。干すときは必ず日陰に干しますが、それでも半日もしないうちに乾きます。たっぷり濡らして汚れを洗い流すだけでも気持ちよく着ることができます。
また、小千谷縮みの着物は上等な浴衣とされる場合もあるようですが、写真のように襦袢と足袋を着ければ十分外出着としても利用できます。夏は着流しのままでもいいのですが、夏羽織を着れば少し改まった感じになります。
下に着る襦袢は、下着類が中途半端に透けないよう、麻の長襦袢などが最適ですが、夏物の半襦袢とステテコか裾除けなどでも十分です。薄物と呼ばれる透ける夏の着物類は、下着が透けて見えないよう、居敷当をつけておく場合もあります。
本来は、真夏でも外出する時は足袋を履きます。真夏に黒や紺の足袋だとさすがに見た目が暑苦しいので、薄い色の色足袋や写真のように白足袋を履くのが良いでしょう。白足袋は改まった礼装用とよく言われますが、好みで普段から履いていてもOKです。ただし汚れやすいので、外出の際には替えの足袋を必ず持ってでかけましょう。外出時の履物は、白以外の色物の鼻緒をつけた雪駄か草履が普通ですが、歯の低い右近下駄も歩きやすくてお勧めです。