着物の裏地

1.長着の裏地について

(1)袷仕立ての種類と必要な裏地の種類

 着物を袷仕立てや胴抜き仕立てにする場合、単の着物に居敷当てをつける場合には、裏地が別途必要となります。
 また、袷仕立ての方法も、通常の「袷仕立て(総裏)」と、女性と同じ仕立て方となる「額仕立て」、
 「胴抜き仕立て」の3通りの仕立て方があります。

種類通常の袷仕立て(総裏) 

※写真は木綿の正花を裏地に用いた一例です。

    額仕立て

必要な裏地 胴裏+八掛(裾回し)
紋付はこの額仕立てが一般的です。

   胴抜き仕立て

腰から上を単仕立てにします。
袖裏は有り無しが選択可能です。

  着物の裏地に用いる生地には正絹と木綿素材とがあります。正絹素材の男物裏地を「胴裏(どううら)」といい、
  木綿の裏地は一般に、関東では「正花(しょうはな)」、関西では「金巾(カナキン)」と呼びます。
  正花も金巾も商品的には同じ物をいいますが、当店では標準で「正花」の呼び方を用いております。

  通常、正絹の着物には正絹生地の裏地(胴裏)を用い、木綿着尺には木綿の裏地(正花)を用いますが、
  お客様のご希望により、正絹の表生地の裏に木綿の裏地を組み合わせることもできます。
  木綿の裏地の方が擦れに強く丈夫で安価ですが、表の生地との相性(収縮率が絹とは異なる)により、洗濯すると
  形が歪む場合がありますので、着用目的や頻度、お好みでお選び頂ければと思います。たとえば、日常的に着物
  をお召になる場合などは正花を、年に数えるほどお召になるなら正絹の胴裏を選ぶとよいでしょう。

  なお、サイズの大きな方の袷仕立ては、キングサイズの胴裏裏地1反でも生地が足りない場合があります。
  不足生地の量によりましては、胴裏2反が必要となる場合がありますので、予めご了承下さい。
  このような場合、「額仕立て」や「胴抜き仕立て」にしますと、裏地代が多少ですが安価になります。

(3)「袖口布(そでぐちぬの)」について

  昔は男物といえば、必ずと言っていいほど、袖口に補強用の「袖口布」という別布を取り付けましたが、
  現在では、これを付ける方は少なく、当店では標準では袖口布をつけておりません。理由は、補強布のため
  袖口がやや固くなりしなやかさが欠けること、既製品では色数が少なく、着物と色合わせが難しいためです。
  袖口布の代わりに、着物もしくは裏地と共生地を用いて仕立てる手法を標準としております。
  袖口が擦り切れるほど着るという方は、オプションで袖口布を付けた仕立ても承りますのでご相談下さい。

袖部分を裏返したところ。右上の黒い部分が袖口布です。

(4)「背伏(せぶ)せ」について

  単の長着や麻縮、薄物と呼ばれる正絹の夏着尺などに、「背伏せ」という、背縫いを覆う薄布を取り付ける
  ことがあります。これは、透ける着物では見栄えのため、厚手の生地の単では背縫い部分がかさばらないよう、
  薄手の正絹生地やキュプラなどの「背伏せ布」を背縫いにかぶせて一緒に縫い付ける手法です。
  「背伏せ」は必ず必要なものではなく、透ける生地によっては背伏せがない方が背縫いのラインが目立たない
  場合もあります。当店では標準では背伏せをお付けしておりません。お好みでご指定下さい。
  なお、「背伏せ布」のお色は、標準ではお任せとなります。通常は胴裏生地と同様の色となります。
  お色の指定をご希望の際は、ご相談下さい。

背伏せの一例

(5)「居敷当(いしきあ)て」について

  お尻もしくは着座する部分を「居敷」といい、「居敷当て」とは、単仕立ての長着や浴衣の居敷の部分に、
  補強用として取り付ける布地のことをいいます。単の着物の場合、当店では後ろ身頃の部分に内揚げの
  縫い込みから裾までの長さの居敷当てを標準仕様で取り付けております(下記の写真のようになります)。
  居敷当てを付けておくと、お尻の部分が裂けることや、汗などによる汚れ、また色の薄い着物などの透け防止
  などに効果がありますが、必須ではありません。ご希望に応じて有無やサイズ、取り付け方をご指定下さい。

居敷当てを付けた単長着の一例

2.羽織の裏地について

(1)羽織の裏地の種類

 秋冬に着用する羽織は、通常袷仕立てとし、裏地として「羽裏(はうら)」や「額裏(がくうら)」と呼ぶ
 生地を用います。「羽裏」は反物状の並幅の生地を裏地として使う物で、中央に背縫いの部分があらわれます。
 「額裏」は、羽織専用のサイズの生地に図柄をあしらったもので、中央に背縫いはありません。
 羽裏や額裏をご指定の場合、別途羽裏を商品の中からお選び下さい。

 額裏は自由な表現が可能なため、絵画的な絵柄が多く、友禅などで描かれた物は高価なものとなりますが、
 お客様の好みの絵柄を特注していただくことも可能です。

 羽裏には、専用の生地以外に、サイズが合えば長襦袢生地なども使用することができますので、お客様の好みで
 個性的な裏地を用いるアイデアを自由にお楽しみいただけます。どうぞお気軽にご相談下さい。

 なお、ご希望により、夏羽織以外の羽織の生地も単に仕立てることができます。
 当店では、単の羽織は、生地が透けて見える夏羽織と同様に、全く裏地を用いない仕様を標準としております。
 背の部分を単(背抜き)にし、袖部分は袷にもすることもできますので、お好みに応じてご相談下さい。

        「羽裏」の一例                  「額裏」の一例