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人類未踏の“数”

あるとき小学生の娘に「兆の次の位ってなんていうの?」と聞かれ、「京」だと答えましたが、その先もまだまだ数字の位は続きます。しかしながら、必要性がないだけにほとんど日常生活の中で「京」以上の位が出現することはありません。ところが最近「澗」という位を耳にするようになりました。これはIT用語のひとつである“IPv6”の説明で多く用いられています。インターネットの普及で地球規模のネットワークが実現し、そこに接続されるコンピュータを含む装置を識別するための手段としてIPアドレスが利用されていますが、従来のIPv4では32ビットすなわち約43億個のアドレス空間しか識別できませんでした。43億個というのは膨大な数には違いありませんが、実はすでにそれでも足りなくなってしまったのです。人類はこうした見えない部分でも有限の資源を使い果たそうとしているわけです。そこで128ビットのアドレス空間が利用できるIPv6(Internet Protocol version 6)が考案されました。この技術によると約340澗個という人類にとってはほとんど無限に近い感覚のアドレス空間を識別することが可能になりますが、この澗という位がどのくらい大きいのかというと・・・。

1澗 = 1兆 × 1兆 × 1兆

これは恐らく、識別可能なモノの数という意味では人類未踏の数ですが、果たしてこの無限とも思える数を消費し尽くす時とは一体どんな時代なのか空恐ろしい気さえします。ちなみに、これら数の位は、和算で使われる漢数詞と呼ばれるもので、江戸時代の吉田光由の著した「塵劫記」によると、以下の表のようにさらに大きな単位も存在しています。必要性の有無はともかく、昔の人の想像力とスケールは大したものだと感じさせられるデータのひとつです。「だから何?」と突っ込まれても困るのですが、和算という「和の世界」に、たまには足を踏み入れてみるのも面白いと思いますよ。

漢数詞読み方乗冪アラビア表記
いち1001
じゅう10110
ひゃく102100
せん1031,000
まん10410,000
おく108100,000,000
ちょう10121,000,000,000,000
けい101610,000,000,000,000,000
がい1020100,000,000,000,000,000,000
じょ10241,000,000,000,000,000,000,000,000
じょう102810,000,000,000,000,000,000,000,000,000
こう1032100,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000
かん10361,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000
せい104010,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000
さい1044100,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000
ごく10481,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000
恒河沙ごうがしゃ105210,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000
阿僧祇あそうぎ1056100,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000
那由他なゆた10601,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000
不可思議ふかしぎ106410,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000
無量大数むりょうたいすう1068100,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000

一より小さい数についても十分の一ごとに単位が存在します。よく知られているのは、分(ぶ)、厘(りん)、毛(もう)、までですが、さらにその先は、糸(し)、忽(こつ)、微(び)、繊(せん)、沙(しゃ)、塵(じん)、埃(あい)、渺(びょう)、漠(ばく)、模糊(もこ)、逡巡(しゅんじゅん)、須臾(しゅゆ)、瞬息(しゅんそく)、弾指(だんし)、刹那(せつな)、六徳(りっとく)、虚(きょ)、空(くう)、清(しょう)、浄(じょう)と続きます。

※もともと漢数詞にはない「割」は除いてあります。また、位の分け方や使用文字、読みなど諸説ある部分もあります。

2002年11月16日 掲載