本来の袴紐の結び方
あえて「正式な袴紐の結び目は?」という問に答えるとしたら、それは「結びきり」であると言えます(剣道の袴の袴紐の結び方が通常この結びきりです)。そもそも、袴の紐というのは活動しても解けないように結ぶもので、羽織紐のように解けやすいように結んでおくものではありません。
ところが、現在広く説明されている袴紐の結び方は、十文字結びが正式な結び方で、一文字やその他の結び方は略式という風に説明されています。
実はこの十文字結びという結び方は、明治時代の中頃に登場した貸衣装屋さんが考案したのだと言われています。それまでの結びきりだと、紐が傷みやすく、何度も使い廻すことが出来くなるという事情から考案されたらしのです。
江戸以前はほとんどが結びきりであり、たまに一文字結びが見られる程度のはずです(時代考証にシビアな時代劇などをよくチェックしてみましょう)。
この袴紐の結び目の例でもわかるように、現在言われている約束事の多くは、意外と新しい決め事であるケースが多いのです。楽しく気持ちよく、そして実用的でもある、時代にかなったきものライフを送るための様々な知恵や工夫は、今も昔も、そしてこれからも在りつづけるのが当たり前の姿ではないでしょうか。