袈裟・衣の世界

僧侶の方から寄せられたメールより、袈裟と衣のお話をご紹介します。

一昨年夏、宇都宮の駅で袈裟を偏袒右肩(右肩を出して左肩を覆う袈裟の着方。インドでは左手が不浄の手なので、これを隠して清浄な右肩を出すことで、相手に敬意を表す)ではなく、偏袒左肩(こんな着方は無い)に着ていたバカな偽坊主を発見し、ちょうど待ち合わせていたお寺の奥さんである義理の姉と大笑いしたことがあります。

和服の話から少し離れてしまいますが、袈裟・衣の世界は和服の世界以上に奥の深いものでして、有職故実と仏教の教義と宗派の歴史が混ざり合って、とても複雑な様相を呈しております。この袈裟・衣の研究の第一人者であった故井筒雅風先生(京都女子大教授・専門有職故実、井筒法衣店社長)の「袈裟史・法衣史」という大部の著書がありまして、これをみると日本における袈裟・衣の変遷がよくわかります。その中には今ではよほどのときでないとお目にかかれない、長素絹という裾を4~50㎝も引きずって歩く、まるで御殿女中の衣装のような衣まであるんです。