着物の基本を確認しよう
「着物の基本」を認識しよう
和装品の知識やTPOの取り合わせがきものの基本と思われがちですが、それ以前に、もっと本質的な事実として認識しておきたい基本事項があります。この基本事項を少なくとも、私は次のように考えます。
「きものの基本」とは、「もとは一枚の布であること。そしてその布は、人がまとう衣服であること。」
これこそが、きものを考える上での原点にほかなりません。当たり前すぎて異論もありそうですが、 どんな時代のどんな着物も、この事実は共通しているからです。少なくとも、ここで私たちが考える「きもの」という服装に関しては。ここから「きもの」の発展は始まります。現在考えられるあらゆる分野の技法や情報などのすべてが、 そこに帰結すると言っても過言ではないのです。つまり、布を知れば、その着心地やコーディネートが見え てきます。衣服であることを知れば、着る目的や着るための手間や工夫が見えてきます。これらのことを、全く知らず、あるいは無視しては「きもの」の本質は見い出せません。まずはこのことを確認しておきましょう。
知っておきたい和服のポイント
きものは、外見イメージや想像だけではわからないことが多いので、勉強したりチャレンジしながら覚えていくほかありませんが、きものを楽しむ前の予備知識として、最低でも以下のポイントを確認しておくとよいでしょう。着物の知識は、必要に応じて覚えながら吸収していくのが賢明ですが、拘りすぎるのも考え物です。周囲との協調にも配慮して気持ちよく楽しみましょう。
デザイン | 構造が平面のため、身体に着付けて初めて衣服としてのカタチが完成します。 このため、立体的でサイズ固定の洋服と違い、体型に合わせて多少のサイズ調節が可能です。 |
素材 | 代表素材は絹。他に麻、木綿、化繊、ウールなどが一般的で、これら素材の混紡品も。 正装においては、着用目的によって着物の素材も限定される場合があるので要注意。 |
機能性 | 通気性と保温性の高さは秀逸。季節に応じた着物を着れば、夏涼しく冬はとても暖か。 激しい運動の時は洋服が勝りますが、日常では慣れるとほとんど不自由はありません。 |
着心地 | 開口部が大きいためとても開放的でラクな着心地が楽しめます。帯を締める腰部分以外、 布地が肌に密着しないことも常にゆったりとした着心地が感じられるポイントです。 |
サイズ | 体型に合わせたオーダーメイドが基本。既成サイズが利用できるのは身長175cm程度まで。 着心地がいいのはやはり身体にぴったりのサイズ。古着を買うときは十分注意しましょう。 |
価格 | 絹は決して安くは無いが、基本的には素材次第。木綿や化繊ならかなり現実的な値段に。 ただし新調する場合、仕立て代や裏地代が別途必要です。これらは必要経費と考えましょう。 加工費用込みの値段表示のお店もありますが、仕立て方、裏地によっては差額が出ることも。 |
購入先 | 可能であれば男の着物専門店で。従来の呉服店は女性専門店に近い印象。反物類は必ず現物を 確認してからに。小物類、肌着、古着などはネットショップやオークションでも。他に法衣店なども。 |
着用法 | 基本は前を合わせて帯を締めるだけ。男のきものは帯さえ締められれば問題なく着られます。 |
手入れ | 基本的に絹以外は家庭で洗濯が可能。ただし、注意は必要なので要確認。乾燥機は厳禁。 |
和装用語 | 襦袢や足袋など、和装のみで使用される用語です。中には難解なものもありますが、 必要十分な範囲ならそれほど多くはありませんので、着物を楽しみながら覚えましょう。 |
主な和装品
一度に全てをそろえる必要はありませんが、長く和服を着れば着るほど、必要かつ欲しくなるアイテムです。ここでは簡単なコメントを添えて、最低限の項目を紹介します。疑問を感じたことは早速調べておきましょう。
長着 | ながぎ | いわゆる着物本体のことです。 最低これと帯があればきもの姿になれます。 |
帯 | おび | 角帯と兵児帯があります。 オールマイティな角帯がお勧め。 |
羽織 | はおり | 着物の上に着ます。通常は衿を立てず、 衿首部分を折り返して着用します。 |
袴 | はかま | 必須ではありませんが、礼装用だけでなく 幅広い種類と生地の袴があります。 |
羽織紐 | はおりひも | 羽織の前を止める実用品兼アクセサリーです。 |
襦袢 | じゅばん | 長着の下に着る下着です。 長襦袢と半襦袢があります。 |
和装肌着 | わそうはだぎ | 和装用のアンダーウェアです。肌襦袢、 褌、裾よけ(腰巻)などがあります。 |
足袋 | たび | ソックスとの違いは、足袋全体が露出する こと。現在は男物も色柄豊富。 |
履物 | はきもの | 雪駄、草履、下駄の種類があり、通常、 足に合わせて鼻緒の調整が必要です。 |
素材や仕立ての違いが中心となりますが、長着や袴、襦袢にも当然、夏もの、冬物の区別があります。どんな和装品をどのように組み合わせて利用するかは自由ですが、基本となるパターンは抑えましょう。
■ きものの着用ジャンル
大別すると、礼装(フォーマル)、外出着(おしゃれ着)、普段着、その他(舞台衣装、各種装束など)ですが、用途・目的、着て行く場所などによって、選ぶ着物や関連知識は変わってきます。必要に応じて覚えましょう。
用途・目的 | 服装例 | ポイント |
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礼装(フォーマルな装い) | 紋付羽織袴、紋付袴など | 礼装に紋は必須。ただし紋にも種類がある。 |
外出着(おしゃれ着) | 基本的には何でもOK | センスと腕の見せ所。だらしないのはNG。 |
普段着(日常着、家庭着) | 基本的には何でもOK | 丈夫なこと、家庭で洗濯できること。 |
その他(各種装束等) | その世界の約束事に準じる | 一般認識と異なる場合も多々ある。 |
きものの格式に拘りすぎる必要はありませんが、やはり身だしなみとして一応知っておきましょう。ちなみに、きものの格式には、洋服のドレスコードのように昼と夜の区別はありません。お茶席など、お稽古事の世界のきものは流派によっても微妙に違います。まずは先生に聞きましょう。礼装として和装を選ぶ場合以外、ファッションとしての着こなしは基本的に自由。礼装にももちろん自由度はありますが、着用目的を考えて、個人の好みや都合を優先しすぎないようにするのがマナーです。
着物を身近に感じる秘訣は、とにかく何度も着てみることに尽きます。楽しみながら頑張りましょう。