和風なBOOK(その3)

この本は、最大のヒット作といわれる「用心棒」の5000枚以上のスチール写真の中から、300枚余りのカットを厳選し、ストーリーと共に撮影の舞台裏などを紹介したものです。時代劇映画の本だから和風?と言えばそれまでですが、単なるスチール写真集として扱うにはもったいないほど、「和装」が満載されている一冊です。こうした本を和装資料としての観点から観察するのもまたおもしろいのではないでしょうか。

完璧主義のクロサワ監督らしく、撮影に使用する全ての衣装を監督自ら選定したと言うようなエピソードも書かれていますが、撮影のセットと同じく、リアル過ぎるほどに描かれている衣装の細部を、静止画でチェックできるのが最大の魅力です。

三船扮する侍のよれよれの紋付袴と、袴の紐の無造作な結び方、大勢の登場人物のカットに見られるごく日常的な着姿の様子など、映画撮影であるということを忘れるほど、自然で違和感なく描かれているのは流石としか言いようがありません。懐の緩み具合、帯の位置、背中の皺、尻っぱしょりのヤクザ者など、モノクロであることを差し置いても余りあるリアリティが感じられます。

きものを着るのが当たり前だった時代、いちいち「着こなす」などという意識を持って、毎日生活着としての着物を着用していたとは思えませんが、毎日着る事で自然と着物本来の着姿を無意識に体得できているのです。よれよれの紋付袴の侍が、これほどカッコ良く思えるのはなぜなのか、改めて感じさせてくれる良い機会を与えてくれる一冊となることでしょう。

「用心棒 スチール写真全348」 協力:黒澤プロ
1999年6月1日初版第一刷発行 小学館文庫
定価476円+税 ISBN4-09-416731-5


番外編(おまけの一冊、表紙だけ。^^;)


リアルな褌姿の飛脚を表紙に使用した文庫本です。
おそらくわざわざ撮影されたものと思いますが、
もしこれが本物の古い写真ならスゴイ一枚だと思います。
褌姿もこのくらい潔いと、ぜんぜんイヤらしくないですよね。


内容はきものとは関係ありません。

1999年6月14日 掲載