「鈴源織物」さん訪問レポート 1998/02/03

1月16日~17日、山形県米沢市にある「鈴源織物」さんに伺う
機会を得、さっそく新幹線に乗って訪問してきました。鈴源織物の
長根英樹さんとは、以前銀座のもとじさんで一度お会いしています
が、今回はじっくりと彼の本拠地を訪ねてみることにしました。



東京から約2時間半、東北新幹線
経由で米沢へ。実際に乗ったのは
「つばさ」号。途中の福島という
駅で新幹線の切り離しがあるとは
知りませんでした。

福島駅を過ぎ、山形方面に向かう
と、写真のようにいきなりの雪景
色。前日の15日に降った東京の
雪などお話にならない量です。



着いたその日は、長根さんと少し
遅い夕食を頂いたあと、市内のホ
テルで一泊。仕事柄、出張の多い
私は全国各地のホテルを結構利用
しますが、予想通り備え付けの浴
衣はご覧のとおりのツンツルテン
です。全国のホテル・旅館のみな
さん、せめてあと10センチくら
い長いの置いてくれないかなあ。
ちなみに、このホテルの浴衣は肌
触り◎でしたが、帯がガーゼ寝間
着に付いてくるような共布の細紐
で、腰に一周回すとおしまいの長
さしかないやつで、これは×。だ
けど、さすがは米沢。サービスで
ホッカイロまで置いてあるとは恐
れ入りました。

翌日さっそく、タクシーで鈴源織
物さんに向かいました。とにかく
スゴイ雪。この日の積雪は60cm
とのことでしたがこんなの積もっ
たうちに入らないとか。さすが雪
国。のっけから感覚がぜんぜん違
う場所ですわ。


道路の脇はこんな感じ。多いとこ
ろはすでに乗用車の屋根より高く
除雪された雪が両サイドに延々続
ていました。

黒い人物は実は長根さん。和装に
ブーツの実用性がよーくわかった
ヒトコマです。この雪じゃあ足駄
くらいじゃ役にたたないね(この
写真はあとで一緒にお昼を食べに
行ったときのもの)。

で、鈴源織物さんに到着!おお、
これが有名なホームページの看板
写真の実物かあ。ちょっと写真で
は判別不能ですが、長根さんがい
かにものいでたちで、にこやかに
出迎えてくださいました。

さっそく、おじゃまして着物談義やら和装の未来?やらいろいろお
話をしたあと、工場見学させていただきました。工場見学は一般の
方も予約を入れればOKなんだそうです(私も一般人ですが。非常に
丁寧にそれぞれの工程と機械の役割などを説明して下さいました。



これは経糸の配色/本数を整える
「整経工程」の機械。










左は「繰返し工程」といってカセ
から枠に巻き取っている工程、右
は巻き取ったさまざまな種類の絹
糸の山。左の写真の木製の機械に
は、摩擦係数の小さな陶器製の碍
子が部品として使われているなど
昔ながらの知恵が今もそのまま生
かされています。




縦横の糸をかけて、こういう機械
で織るわけです。それにしても、
想像以上に油臭い工場の中で正絹
の織物は織りあがってゆくのでし
た。ほんとにみなさん、ご苦労様
です。






機械にかけてある縦糸をアップで
撮ってみました。機械の種類にも
よりますが、物理的には縦糸をか
ける幅を広く取れば広幅の反物も
織ることは可能なんだそうです。
確かに袴地や背縫いのない長襦袢
地なんかはそうですよね。





これらは、反物に模様を織り成す
種類の機械。左は紙のパンチカー
ドを読み取って図案を起こすもの。
右はオルゴールみたいな原理で
動作するもの。15年以上前のコ
ンピュータみたい。ちなみに、この
紙パンチの代わりにパソコンのデ
ータを読み取る機械を、一部導入
することを構想中とか。この紙カード
の架け替え作業が結構な重労働
なのだそうです。

工場見学を終え、母屋に戻ってちょっと一服したあと、今度は実際
にここで織られている製品の数々を非常に丁寧に説明してください
ました。なるほど、実際に手にとって布地の風合いや手触りを確か
めると、染めの着物と違った織物独特の布地の個性が伝わってきま
す。どれも一度は袖を通して、実際に肌で味わってみたくなりまし
た。でも、ここのは業界でも有名な高級品ですからねえ。中央の写
真の反物は全部お召ですし、角帯もいいのがたくさんありました。
ちなみに、角帯の奥に写っているのは高級品の織りの羽裏です。帯
の横には夏物の生地がたくさん展示してありました。とにかく全部
は紹介しきれないほどたくさんの種類があるのには驚かされます。
しかもほとんど男物。
きもの好きの男性にはぜひとも一度は訪れて頂きたいものです。


長根さんとあれこれ話し込んで、あっという間に時間が過ぎてしま
いました。長根さんは私よりずっとお若いのに本当にきものがお好
きでこの世界に飛び込み、研究熱心に活躍されています。きものを
着出してからまだ2年半足らずとのお話でしたが、着こなしだけで
なく、織り元だけに製品知識も非常に深いことには驚かされます。
なお、長根さんとお話した内容については、追々どこかで紹介する
ことにします。例えば、袴のときのトイレはどうするの?とか、着
物の新しい仕立て方のアイデアとか、興味尽きない1日半でした。

まだまだ話し足りなかったこと、奥様とお会いできなかったことな
ど、心残りはたくさんありましたが、今回はこの辺でお別れです。
今度は気候のよい季節に伺いたいですね。そうそう、お昼に食べた
米沢牛のステーキと牛刺、とっても美味しかったですよ。
次回はお蕎麦も食べに行かなきゃね。

お昼を食べに行ったステーキ屋さんで、
お年賀の粗品にポケットティッシュ用の
ケースをもらいました(正絹の紬地製)。
こうした小物も和装人には嬉しい一品で
すね。これもいい思い出の品となりました。

※鈴源織物さんは残念ながら2018年に廃業されました。